扁桃炎が合併症を発症するのは本当か

喉の奥にある扁桃腺は左右1個ずつついているリンパ組織で、口をあけると簡単に肉眼で確認することが出来ます。
2歳頃までの免疫機能が不完全な時期には、ウイルスや細菌などの微生物が体内に侵入してくるとこれらを排除する機能を担っていますが、身体全体の免疫システムが完成してからは、特に何らかの機能を発揮しているわけではありません。

ところで、扁桃腺は上気道に細菌やウイルスなどが感染すると炎症を起こして扁桃炎を発症することがしばしば見られます。
急性のものは放置しておいても重症化しないかぎり数日程度で治癒しますが、なかには発症と治癒を繰り返し慢性的に経過する場合もあります。
扁桃炎が慢性化することの背景には、食生活の欧米化により軟らかい食事が好まれる結果、顎の筋肉が未発達になり口が十分に閉じることが出来ないため口呼吸の習慣が身についてしまっていることがあります。
口呼吸ではダイレクトに大気中の微生物が入り込んでくるため、感染源に日常的にさらされることになり、炎症が慢性化するわけです。

ただし扁桃炎が慢性化しても、嚥下時の違和感や疲労時に扁桃腺がはれる程度の症状で済む場合が大半ですが、なかには別の臓器で病気を引き起こす場合があります。
これが扁桃病巣感染症と呼ばれるもので皮膚や骨関節・腎臓などに合併症を併発するのが特徴で、掌蹠膿疱症やIgA腎症・胸肋鎖骨過形成症が代表的です。

そもそも扁桃炎が扁桃病巣感染症を発症するメカニズムについては、完全には解明されていません。
この点、扁桃腺に細菌感染などが刺激になって免疫機能が暴走し皮膚や骨関節や腎臓などの全身組織を抗原と認識して攻撃することが原因と考える見解が有力です。
元来、口内には人体に無害な細菌も生息しており免疫も働かないのが普通です。
ところが扁桃の免疫が過剰に反応した結果、免役細胞から生み出された抗体が全身を駆け巡り掌蹠膿疱症などの合併症をもたらすと考えられています。

扁桃炎と軽視していると大変な事態になることも

それでは扁桃病巣感染症の代表的な病気の特徴や症状を確認しておきましょう。
扁桃病巣感染症の中でも比較的良く観察されているのが掌蹠膿疱症です。
はじめは手のひらや足のうらに、かゆみを伴う小さな水泡や皮疹が複数発生してきます。

水泡や皮疹のなかには膿が溜まっていますが細菌感染に由来するものではないので膿に触れても他人にうつることも、膿に接触することで他の部位に皮疹が広がることもありません。
やがて皮疹などは角質が剥がれてカサブタ状態になり、うろこのようになって皮膚から剥がれ落ちていきます。
掌蹠膿疱症は爪の下に皮疹が発生することもあり、その場合は爪が剥がれたり肥厚するなどの症状が出てきます。

掌蹠膿疱症では関節痛を伴うことも多く、胸部の肋骨や鎖骨などに胸肋鎖骨過形成症を併発する場合もあります。
胸肋鎖骨過形成症特有の症状には有痛性の腫瘤で30-50代の女性に多いとされています。
肋骨や胸骨・鎖骨などの胸郭部分の骨の関節に炎症をもたらし疼痛になり、時に激痛になって心筋梗塞などの疑いで診察のきっかけにあることもあります。
疼痛と共に骨組織の肥大化する経過を辿ることもあり鎖骨などの肥大化が見られる場合があります。

扁桃病巣感染症の中でも時に深刻な症状につながる可能性があるのが、IgA腎症になります。
腎臓には糸球体という毛細血管が豊富な組織があり、尿の形成に重要な役割を担っています。
ところが免疫細胞が血管を異物と認識して攻撃をすることで炎症が発生し、血尿やたんぱく尿などの症状が観察されることがあります。
腎機能の低下が進むと腎不全になり人工透析を受けなければならなくなるリスクがあります。
血尿といっても顕微鏡レベルで発見されることが多いので扁桃病巣感染症の方は定期的な腎機能検査が必要です。